長期優良住宅とは、国が定めた認定基準を満たし、長期にわたり良好に使用可能なことが認められた住宅のことです。長期優良住宅では、税金や住宅ローンの金利、補助金などで様々な優遇措置が用意されています。
長期優良住宅の特徴やメリット・デメリットについて、また2022年度の認定基準改正ポイントを千葉県木更津市の工務店がくわしく解説していきます。
長期優良住宅とは
国土交通省は、「長期優良住宅認定制度」を、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅の建築・維持保全に関する計画を「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づき認定するものと、説明しています。
要約すると、長く快適に住み続けられる住宅を長期優良住宅と名付け、それを実現するための建築方法やどのように維持・保全するかの計画までひっくるめて認定する制度のことです。
この法律は、2009年(平成21年)に施工され、新築物件には同年の6月より、既存住宅の増改築には2016年(平成28年)4月より認定が開始されました。
これまでの我が国の住宅は、平均寿命が30年と言われる短命住宅がほとんどでした。
残念ながら、それが現実で、例えば国の固定資産の評価は「耐用年数24年」と定められています。
そんな短命な住宅ばかりを建ててきたのは、終戦後、焼け野原となった我が国では、ともかく人が住むための住宅づくりが急務とされ、とにかく建築戸数を増やすことが求められ、その質に関しては最低限で済まされてきたからです。
その後、大地震や台風などの災害を被るたび、少しずつ耐震性能などの基準が強化されたり、オイルショックや温暖化の問題に対処するために省エネルギー性能などが見直されたりと、法改正を繰り返してきました。
ようやく住宅の質にも目が向けられ長寿命住宅が謳われるようになったのは、いわゆる「高気密・高断熱」を実現する技術が確立されてきた頃です。
その流れを大きく変えたのが、2006年6月に制定された「住生活基本法」です。
それまでの「量の確保」から「質の向上」=「ストック重視の政策」への転換が基本的な住宅政策の方針として示されたのです。それを「政策提言」としてひとつの形にまとめたものが、2007年5月に自民党から公表された『200年住宅ビジョン』構想であり、さらにそれが法制化されたものが長期優良住宅の認定制度です。
つまり、長期優良住宅認定制度の主たる目的は「長期にわたり良好な状態で使用できる家」を建てる(普及させる)こと、すなわち家の長寿命化です。
■長期優良住宅の定義
「長期優良住宅」とは、大きく分けて以下A~Eの5つの措置が講じられている住宅を指します。
A. 長期に使用するための構造及び設備を有していること
B. 居住環境等への配慮を行っていること
C. 一定面積以上の住戸面積を有していること
D. 維持保全の期間、方法を定めていること
E. 自然災害への配慮を行っていること
「長期優良住宅」の認定を受けるためには、A~Eの全ての措置を講じ、必要書類を添えて所管行政庁に申請することが必要です。
認定後、工事が完了すると維持保全計画に基づく点検などが求められます。
国が定めた基準をクリアし、長期優良住宅の認定を受けると、税制面などの優遇措置を受けられるメリットがあります。
■長期優良住宅に認定される基準
長期優良住宅に認定されるには、さまざまな基準をクリアしなければなりません。
ここでは、そのポイントを解説しましょう。
注)長期優良住宅認定制度は、建築の工法や新築・既存、一戸建て・共同住宅(マンション)等にかかわらず利用できますが、ここからは「新築の木造戸建て住宅」に絞り解説します。
■2022年長期優良住宅の認定基準改正のポイント
①災害に係る認定基準の追加
昨今、頻発する豪雨などの災害のリスクに配慮するために認定基準が追加されました。災害リスクの高い地域では、長期優良住宅の認定取得ができない、一定の処置が必要になります。(2022年2月20日施工)
土砂災害、津波、洪水などの災害の危険性が特に高いエリアは認定対象から除外。災害リスクが高い区域では、所管行政庁が定めた措置が必要となります。
【長期優良住宅の認定を行わない区域等】
認定を行わない区域
- ・土砂災害特別警戒区域
- ・地すべり防止区域
- ・急傾斜地崩壊危険区域
認定を行わない、又は必要な措置等
- ・浸水被害防止区域
- ・災害危険区域
- ・津波災害特別警戒区域
必要な措置等
- ・津波災害警戒区域
- ・土砂災害警戒区域
- ・洪水浸水想定区域
- ・雨水出水浸水想定区域
- ・高潮浸水想定区域
まずは、家を建てる土地をハザードマップ等で調べ、所管行政庁に確認することが必要となります。
②省エネルギー基準の改定
長期優良住宅に求められる断熱性能の要求値が「断熱等性能等級4」から 「断熱等性能等級5」かつ「一次エネルギー消費量等級6」と基準が引き上がりました。(2022年10月1日施工)
③認定手続きの合理化
これまでは、住宅性能評価を行う民間機関と、長期優良住宅の基準確認を行う機関が別で、2度確認手続きを行わなくてはいけなく、確認にも時間がかかっていました。改正により、民間機関が住宅性能評価を行うのと並行して、長期優良住宅の基準確認を行えるようになりました。(2022年2月20日施工)
④長期優良住宅認定対象の拡充
改正前は、既存住宅は改修、建築工事をしないと認定が受けられない
改正後は、既存住宅でも認定基準を満たしていれば「改修工事なし」でも認定できる(2022年10月1日施工)
■長期優良住宅認定基準
基準項目 | 解説 | 等級・基準値 |
省エネルギー性 | ■必要な断熱性能等の省エネルギー性能が確保されていること | ・断熱等性能等級5かつ ・一次エネルギー消費量等級6 |
劣化対策 | ■数世代に渡り居住可能な構造 | ・劣化対策等級3 |
耐震性 | ■極めて稀に発生する地震に対し、継続利用のための改修の容易化を図るため、損傷のレベルの低減を図ること | ・耐震等級2または条件つきの等級1 |
維持管理・更新の容易性および保全計画 | ■配管などのメンテナンスが容易 ■内装や設備の点検・補修が容易 ■建物の点検・補修の計画 |
・維持管理対策等級3(専用配管) |
住戸面積 | ■面積が一定以上であること | ・一戸建て:75㎡以上 |
居住環境 | ■地区計画、景観計画、条例による街並み等の計画、建築協定、景観協定等の区域にある場合には、これらの内容と調和を図る | ・所管行政庁が定めた措置を講じる |
災害配慮 | ■災害発生リスクのある地域においては、そのリスクの高さに応じて、必要な措置を講じる | ・所管行政庁が定めた措置を講じる |
曖昧であった「よい家」と判断するポイントを、具体的な項目にわけて定義しています。
等級や基準値についても、明確に定めています。
多岐に渡る項目数は、優良住宅であるためには、複数の評価軸を持つ必要があるためでしょう。
例えば断熱性に優れた家であったとしても、耐震性が低ければ優良住宅とは呼べません。
このような基準をクリアした住宅を「長期優良住宅」として認定し、税制面で優遇することで、日本全体に増やしていく制度です。
■長期優良化住宅の5つのメリット
長期優良住宅を建築する5つのメリットについて解説していきます。
メリットには税金控除やローンの金利優遇、保険料の減免などがあります。自身で申請する必要があるものも多いため、注意点も含めてご紹介していきましょう。
【メリット1】 税金の控除・減税を受けられる
長期優良住宅ではさまざまな税金の控除や減税を受けられます。しかし、期間やくわしい要件が定められているため、内容をしっかりと確認することが必要です。
それぞれの概要について見ていきます。
■住宅ローン減税
住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)とは、年末のローン残高に応じて所得税や住民税が最大13年間控除される制度です。
一般住宅では控除額の上限が3,000万円なのに対して、長期優良住宅では5,000万円と優遇されています。控除率は2022年度より一部例外を除いて0.7%となりました。
長期優良住宅と一般住宅の住宅ローン減税を比較してみると…
・新築の長期優良住宅の場合(2022、2023年に入居)
控除額 5,000万円×0.7%=最大35万円
35万円×13年=455万円
・新築の一般住宅の場合(2022、2023年に入居)
控除額 3,000万円×0.7%=最大21万円
21万円×13年=273万円
13年間で455万円-273万円=182万円 もの差があることがわかります。
■不動産取得税
不動産取得税とは、不動産を購入したときにかかる税金です。
固定資産税評価額×税率(3%)で求められます。
一般住宅では不動産取得税控除額の上限が1,200万円なのに対し、長期優良住宅では1,300万円と拡大されています。
固定資産税評価額が3,000万円と仮定して比較してみると…
・長期優良住宅の場合
不動産取得税額 (固定資産税評価額-1,300万円)×3%=(3,000万円-1,300万円)×3%=51万円
・一般住宅の場合
不動産取得税額 (固定資産税評価額-1,200万円)×3%=(3,000万円-1,200万円)×3%=54万円
となり、長期優良住宅が数万円多く減税されることがわかります。
■登録免許税
登録免許税とは、購入した不動産の所有権登記にかかる税金です。
住宅の評価額×税率で求められます。
一般住宅では登録免許税の税率は所有権保存登記の場合0.15%、移転登記の場合0.3%となっています。一方、長期優良住宅では所有権保存登記の税率が0.1%、移転登記の税率が0.2%と減税措置を受けられます。
住宅の評価額が5,000万円と仮定して比較すると…
・長期優良住宅の場合
登録免許税(保存登記) 5,000万円×0.1%=5万円
・一般住宅の場合
登録免許税(保存登記) 5,000万円×0.15%=75,000円
となり、長期優良住宅のほうが数万円多く減税されます。
■固定資産税
不動産を保有している間は、固定資産税を納める義務があります。
住宅を新築した場合には、固定資産税は3年間税額が1/2に減税されます。長期優良住宅の減税期間は5年です。
■投資型減税
投資型減税とは、住宅ローンを組まずに長期優良住宅を購入する人に対する減税です。
住宅ローン減税の恩恵を受けられない人の不公平感をなくすために導入されました。
具体的には、長期優良住宅を建てる「掛かり増し費用」の10%を所得税から控除できる制度です。掛かり増し費用とは、長期優良住宅の基準を満たすためにかかった費用です。
控除されるのは居住開始の年のみです。
標準的な掛かり増し費用の限度額は650万円、控除率は10%と定められているため、最大65万円を所得税から控除できます。
■贈与税
父母や祖父母などから受けた住宅資金に対する贈与税のうち、一定額は非課税です。
一般住宅では贈与税非課税の上限が500万円なのに対して、長期優良住宅では1,000万円まで非課税枠が拡大されています。
【メリット2】 住宅ローン金利が優遇される
全国の金融機関と住宅金融支援機構が提携して取り扱っている住宅ローン「フラット35」は、低金利で金利変動がないことが特徴です。
長期優良住宅など一定の水準を満たした住宅向けに「フラット35S」という商品が準備されています。長期優良住宅では金利Aプランを利用できるため、借り入れ当初10年間の金利がフラット35の金利より0.25%優遇されます。
【メリット3】 地震保険料の割引を受けられる
長期優良住宅は、耐震等級2以上であることが認定基準の一つです。地震保険料の耐震性能割引率は以下のとおりです。
耐震等級2 割引率 30%
耐震等級3 割引率50%
割引を適用するには対象となる建物の耐震等級を証明した書類が必要となるため、注意が必要です。
【メリット4】 補助金を受けられる
長期優良住宅において受けることができる補助金は以下のとおりです。
• こどもみらい住宅支援事業
• 地域型住宅グリーン化事業
それぞれの概要を解説しましょう。
※最新の情報は所管行政庁にお問い合わせください。
こどもみらい住宅支援事業
若い世代の夫婦や子育て世代が家を建てるときに活用できる新しい補助金です。長期優良住宅では最大で80万円の補助金を受給できます。
住宅を新築し、補助金を申請する時点において
• 2003年4月2日以降に出生した子どもがいる
• 夫婦であり、いずれかが1981年4月2日以降に生まれた
という要件に当てはまる場合に対象となります。
地域型住宅グリーン化事業
国土交通省の採択を受けたグループが建てた、木造住宅において活用できる補助金事業です。長期優良住宅では最大110万円の補助金を受給できます。
また、地域材を主要部分に使用する、三世代同居、若者・子育て世帯では追加で20~40万円の加算を受けられる場合もあります。
【メリット5】 快適で安全な住宅に長く住み続けられる
長期優良住宅の認定基準を満たすことで、快適で安全な住環境に長く暮らせることは大きなメリットです。高い断熱性能や耐震基準をクリアしている長期優良住宅は、定期的にメンテナンスをすることで、次の世代へ家を受け継いでいくことができるでしょう。
■長期優良化住宅のデメリット
長期優良住宅のメリットについて解説してきました。しかし実際に住宅建築を計画する場合には、デメリットについても理解しておくことが大切です。 そこでこの章では長期優良住宅における4つのデメリットについて見ていきましょう。
【デメリット1】 申請に手間と費用がかかる
長期優良住宅として認定を受ける場合には、一般住宅と比較すると手間と費用がかかります。
申請には確認書や各種図面などの添付図書などが必要となり、建築を依頼している工務店やハウスメーカーに協力してもらわなければなりません。
自身で申請する場合の手数料は、地方自治体によってばらつきがあります。
工務店やハウスメーカーへ代行申請を依頼する場合は、一般的に約20~30万円程度代行費用がかかります
【デメリット2】 建築費用の増加や工期が長くなることがある
長期優良住宅の建築費は、一般の住宅より、性能等を高くするために建築費用が高くなります。
また長期優良住宅は認定申請されてから着工する必要があるので、着工までに一般の住宅より時間がかかります。
【デメリット3】 設計プランに制約が発生する場合がある
長期優良住宅は、維持管理、耐震性、省エネルギー性など長期優良住宅の基準を満たさなければならないため、建築主の希望通りの自由設計の場合設計プランに制約がでる場合があります。
【デメリット4】定期的な点検とその履歴を保存する必要がある
長期優良住宅の認定を受けると、維持保全計画に従ったメンテナンスを行わなければなりません。
・維持保全期間は、30年以上
・点検期間の間隔は10年以内
・地震、台風時に臨時点検を実施
・点検の結果を踏まえ、必要に応じて調査、修繕又は改良を実施
・住宅の劣化状況に応じて内容を見直し
メンテナンスを怠ると認定が取り消され、税や補助金などの優遇を受けていた場合、その分の返還を求められることもあるので注意が必要です。
メンテナンスの履歴を記録しておく必要があるのも手間のひとつでしょう。所管行政庁からメンテナンス状況の調査が入った際に、「報告をしない」「虚偽の報告をする」等の対応をすると、30万円以下の罰金に処せられることがあります。
さらには、増築やリフォームを行う際は、あらかじめ所管行政庁より計画変更の認定が必要となります。
増築・リフォームの計画内容についても、長期優良住宅の基準に合わせる必要があります。
売買や相続をする時も、所管行政庁の承認が必要です。承認されると新しい所有者に維持保全計画の内容が引き継がれますので、新しい所有者がその計画に基づいてメンテナンスを行なっていくことになります。
まとめ
高い性能を持ち安心、安全な認定基準をクリアした長期優良住宅。
今回の記事を参考に、長期優良住宅への理解を深めて長く安全に暮らせる家を手にいれてください。
長期優良住宅をご検討されている方は、当社「仁・幸夢店」までご相談ください。
長く安心して住める住宅を新築することで、その家に住む方が快適で安心な暮らしを送ることができるだけでなく、資源を大切にするストック活用型社会を実現する一助にもなります。
長期優良住宅制度の背景にある「いいものを作って、きちんと手入れをして長く大切に使う」という考え方には、仁・幸夢店が創業以来、半世紀にわたり「高性能」で「長寿命」の住宅を追求してきた住まい創り、「良い住まいは、受け継がれていくもの」という考え方に通じるものがあります。
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