目次
色彩には脳や心身に影響を与えるチカラがあります。
色が人の心理に与える効果、人生を好転させる行動へとつながる色づかいを取り入れ、ご家族の健康と幸せな暮らしを。
色のもつ効果やチカラについて、一級建築士がくわしく解説します。
豊かな暮らしを実現するためには、色がどのような効果を与えるかを知り、上手に住まいに取り入れることが大きなポイントになります。
色彩が気分を変える
人間は色次第でやる気が湧いたり、優しくなったり、気力や集中力が高まったりします。
反対に心が病んだり、元気を失ったり、悪いイメージが浮かびやすくなるケースもあります。
このように一つ選択を誤ると毒になってしまう色彩も賢く取り入れて活用すれば、その効用は計り知れないものになります。それほどまでに「色」は、心や神経系と密接な関係があるのです。
1958年にカリフォルニア大学のロバート・ジェラート博士が行った「色」と「感覚」や「感情」の関係を調べる実験によると、特定の色が心の状態、呼吸速度、呼吸運動、脈拍速度、脈拍数、血圧に影響することが判り、同様の実験は今日まで様々な角度から実証されてきました。
極端な例では、真っ赤な部屋の中で何日も過ごすと、人の脈拍や血圧を上げ、攻撃的になるということです。
この「怒り」などのストレスは、自律神経や副交感神経のバランスを崩し、多くの病気を生みだすことが解明されています。(免疫学の権威である新潟大学教授の故・安保徹博士)
カラーセラピー 〜色彩の歴史〜
紀元前4200年から2181年、古代エジプトのカイロ近郊の古代都市ヘリオポリスには、癒やしの神殿があり、医師は色の部屋で治療するために、太陽光をスペクトル別に分け、使っていたといわれています。
ギリシアの太陽神ヘリオスにちなんで、「へリオセラピー(太陽療法)」と呼ばれ、現在のカラーセラピーの起源といわれています。
紀元前500年には、ギリシアの宗教家であり、数学者、哲学者のピュタゴラス(Pythagoras;582~497BC)が、病気の治療に色を使ったといわれています。
ギリシアの医学者であるヒポクラテス(Hippocrates;460~375BC)は、現代医学の創始者と称され、人間の習慣や食物、心臓の鼓動、皮膚の色、それらによって人間の病気に対する診断と科学を確立しました。
紀元前1世紀のローマの医師も、色のついた絆創膏を使っていたといわれています。これは、光線療法やカラーセラピーとして使われるようになりました。
R・B・アンバー(R・B・Amber)は、次の言葉を残しています。
「色彩は健康のために役立ち、太陽光は全スペクトル色を含んでいる。その中から、生体は必要な色を抽出して吸収し、不要な色は受け付けないので、できる限り裸になって短時間の日光浴をするのが一番よい。さらに色彩治療を満たすのは熱でなく、色である」と。
西暦元年、A・C・セルサス(Aurelis Cornelius Celsus)の色彩観は、多種多様な花(スミレ、アヤメ、スイセン、バラ、ユリ)を使って、黒、緑、赤、白の軟膏を処方しました。
赤色の膏薬は傷を急速に癒合させ、黄色に関しては、アヤメ油を使ったサフランの軟骨を頭に塗ると眠りをさそい、心を鎮静させることを突き止めています。
G・ブライハウスという研究者は、筋肉反応のテストをしています。
ふつうの光よりも赤色光のもとでは、反応が12%すばやくなり、緑色光では反応が遅れることをつきとめています。
色によって時間感覚が狂ってしまうことも、この反応と密接に関係しているといえます。
色彩が心身に与える影響
アイザック・ニュートンは、「色彩は光そのものである」という言葉を残しています。
ここからは『色の秘密』(野村純一著、文藝春秋刊)を参考に、色彩や光が心身に与える影響について紹介します。
○暖色の部屋では時間の経過が長く感じられる
人間の時間感覚は色によって、心理的に影響されます。
例えば、赤や橙色にかこまれた環境では、時間を長く感じられ、「1時間たったかな?」と思って時計を見ても、30分しか経っていないようなことがあります。
反対に、寒色系は実際の時間を短く感じさせます。
「1時間たったかな?」と思うと、実は「2時間も経過していた」という具合です。
これは工場などの色彩にも応用できそうです。
寒色系の部屋では、実際の時間経過をその半分に過小評価するため、その分、生産性が上がることが判っています。
色は体感温度を左右する
色には人間の生理や感情に及ぼす力があります。それは人間が色を単に目だけでなく心で受けとめているからです。
好き嫌いとは関係がなく、暖色系を見ると、実際に体は温まり温度も上昇します。これを体感温度と言います。逆に、寒色系や薄暗いところでは、体が寒く感じ、自律神経への刺激も減少するため体感温度が下がります。
これについては多くの職場などで統計調査が行われています。
例えば、ロンドンのある工場では女子従業員の欠勤が多く、何が原因なのかを調べたところ、彼女たちが鏡をのぞくと、自分が病人のように映って見える青色光の仕業であったそうです。
ウソのような話ですが、青色光が病気をつくりだしていたのです。
さらには、壁の色が陰気な灰色だったからたまりません。灰色は、気持ちを暗くします。
さっそく壁を暖色系のベージュ色に塗り替えると、青色光は中和され、欠勤は減少しました。
またロンドンの別の工場では、灰色の機械が明るい橙に塗り替えられただけで士気が高揚し、事故は減少、不機嫌だった従業員が作業中に歌をうたいはじめたといいます。
ところが、その工場のカフェテリア(セルフサービスの食堂)では、空気調節もよく明るい青色の壁であったのですが、従業員は21度の室温でも寒い寒いとこぼしていました。ここを利用する人たちも、上衣を着て食事する人が少なくなかったそうです。
そこで、24度まで室温を高くしてみたのですが、やはり寒いと苦情が絶えませんでした。その原因が壁の色ではないかと考え、橙色に塗り替えると、24度では暑すぎると文句が出て、結局もとの室温21度に戻したら、みんなが満足したといいます。
反対に、室温が高いという不平があった工場では、明るい灰色、パステル調の緑色などの寒色系を導入したところ、それだけで不満が解消したといいます。
アメリカのとある工場では、空調を常に21度に設定していたのですが、女子従業員たちから寒いという苦情が絶えませんでした。そこで空調はそのままにして、白い壁をくすんださんご色に塗り替えたところ、苦情はパタリと止んだそうです。
信じられないという人にも、これは簡単なテストで証明できます。
一定の温度の水をふたつのガラス容器いっぱい入れ、一方は赤橙色に、他方は青緑色に水を染めます。手を入れて「どちらの温度が高いか?」を聞いて見ると、被験者の多くは赤橙色と答えます。
数多くの人に50色のカラーカードを提示して、暖寒の色相をつきつめたところ、一番温かく感じる色相は赤橙に集中したといいます。
一方、一番冷たい色相となると緑青から青、紫と広い範囲にばらつきがあり、寒色系の領域のほうが広いことが判りました。
人の感じる温度を調査してみた結果、暖色系と寒色系では、その心理的温度差(体感温度)は、3度も開きがあることが証明されています。
カーテンの色でも、よほど鈍感な人は別として、無意識に影響を受けることになります。
ですから、「ブルーのカーテンをピンクのカーテンに替えたら、部屋が暖かくなりました」なんてことは、よくある話なのです。
味は視覚できまる
色の実験として、楽しい実験を紹介します。
目隠しして、鼻を硬くつまみ、リンゴの銘柄をあててもらう味覚テスト。これを「いかさまテスト」といいます。
リンゴの銘柄はなんでもいいので、たとえ当たっても偶然です。
このテストの目的は、生のジャガイモを食べさせることにありました……。
ひどいやり方ですが、何も知らない被験者は生のジャガイモをおいしくバリバリ食べて、「***リンゴかな?」と答えてくれます。
味の違いは歴然なのに、なぜリンゴとジャガイモを区別できないのでしょう?
実は、私たちの味の感覚受容器のなかで、視覚、嗅覚、それに味覚の三つは、もっぱら化学物質によって刺激されるのです。
味受容器は、私たちが食べた食物中の化学物質に刺激され、嗅受容器は空気中の化学物質で刺激されます。確かに味覚は知覚されるのですが、視覚や嗅覚に比べると、はるかに「鈍感」なのです。
そして、最も重要な感覚が視覚です。
だとしたら、私たちの「五感」はどれくらいの割合で活躍するのでしょう…?
視覚はなんと87%働いているのに、味覚はわずか1%にすぎません。
私たちの食事では、驚くばかりに視覚が優位を占めています。食器の色で食欲がそそられるのも、そのためです。
生死を左右する色彩
ロンドンのテムズ川にかかるブラックフライア・ブリッジは以前、黒色で投身自殺の名所でした。これが緑色に塗り替えられてからは、なんと自殺者は3分の1以下に急減しました。
サンフランシスコのゴールデンゲート・ブリッジも自殺の名所なのは、これは赤で塗られているからです。
家にどんな色を用いるか?
空間の壁一面を適した色に塗るなどして、色の効果を取り入れることができます。
リビングは、イエローやオレンジを取り入れることで、明るい家族団欒を助長します。床に敷くアクセントラグなどはグリーンやイエローがよいでしょう。
キッチンの色は、暖色系やナチュラルな感じがする木質系の色が場を整えます。キッチンに寒色系を用いていると免疫と血液循環を悪くしてしまいます。
トイレも同様に、寒色系の配色は陰の気を強め、体を冷やしやすく、血管系障害が起こりやすくなります。淡いピンクや小豆色は、お通じをよくします。
浴室は暖色系でアイボリーか、薄いピンクやオレンジ系統にするとリラックスできます。
寝室は、薄いグリーン、ベージュにすることで、心身を癒やします。
玄関は、イエロー、淡いピンクにすると、外での疲れや嫌なことをリセットできます。
白い壁は注意も必要
日本の屋内の壁は、ほとんど白が基調で、楽しさが演出されていません。これが日本人から楽しさを奪い、内向的な性格を形成していると考えられます。
欧米に行くとオレンジ、ピンク、グリーンといった様々な色が室内に使われていて、部屋ごとに楽しい雰囲気が醸し出されています。
日本では、色を多く使うとうるさくなると考えるのでしょう。「落ち着かない部屋になってしまいそう」と敬遠される向きもあります。無難が一番を考え、かえって楽しさや明るさが失われているのです。
もっと素直に、ハッピーな色遣いをしても何ら問題はありません。しあわせになる家なのですから、色彩からしあわせを演出しましょう。
壁の色を変えれば、心が変わるのです。感情の切り替えも、うまくできるようになります。
人は、色を目だけでなく皮膚でも見ています。寝ているときも、服を着ているときも、色を吸収しているのです。
壁の色で、人の心を変える
例えば、落ち込んでいるとき黄色の壁紙の中にいれば元気になります。落ち込みやすい人は、オレンジ系や黄色の壁紙にするとよいでしょう。
孤独なときに真っ白な壁紙の中にいるとさらに孤独になります。
疲れたときにグリーンの壁紙の中にいると疲れが取れやすくなります。
怒りっぽい人や高血圧の人は壁紙の色をブルー、疲れやすい人はグリーンにするとよいです。
これが東洋医学の仕組みで、色は心身のバランスを調整します。とくに、壁紙の色は面積が大きいだけに影響力も大きくなります。
壁紙の素材や色は住む人の性格をつくる
真っ赤な部屋にいると興奮しすぎて死にたくなったり、グリーンの部屋にいると免疫力が高くなったりします。
例えばアメリカでは、ベーカーミラーピンクという暴力性を落とすピンク色が特許を取っています。
外壁が真っ白だと寒く見えます。グレーであっても暖かい家には見えません。
視覚的な暖かさも必要です。
外壁の色は、暖色系を使うことで暖かく見えます。
さらに、風呂場、トイレ、キッチンも暖かい暖色系にすると攻撃性が落ちると考えられます。
風呂場が、寒々しく、浴槽が小さく、床がタイル、色はブルーや黒といった家に住む人は、攻撃的になりやすい傾向にあります。
色彩は、人の心の成長や脳の発達に大きく影響を与える
どのような色彩のものに囲まれて過ごすかで、どのような性格や人生を形成していくかが決まります。
毎日、真っ白の壁に囲まれ、その白さが自然に目に入り込むことで、人の心はどのようになってしまうでしょう…?
そういった住環境で育った子どもは、心が豊かに成長できず、キレやすくなり、冷たい心をもつ傾向にあります。
どの部屋も壁紙が白、外壁も白か黒の無彩色、室内の色の変化や動きがない単調な住空間、色彩のない住空間は、能力の低下につながると考えられています。
白い壁紙ばかりの室内は、光を反射して目のストレスにもなります。
また、単調なので人間をイライラさせてしまい、落ち着きを失いやすく、キレやすい精神状態をつくります。暴力、引きこもりを増やしてしまいます。
明るい色彩のなかにいれば、人は明るいことを考えるようになります。
暗い色彩のなかにいると暗い気持ちになり、怒りや恐怖を司る扁桃体の刺激が強くなって不安になるのです。
豊かな感情を引き出す5つの色を住環境に配置する
1、オレンジ …活動、やる気を高める、実行力
2、グリーン …休息、探求心、理解力、健康力
3、イエロー …希望、夢、楽しみ、幸福感
4、ブルー …直感、ひらめき、満足感、学習力
5、ブラウン …安定力、現実性、落ち着き
これらの5色をポイントとして目に飛び込んでくるように配置するとよい。
心が色彩によって活性化します。
色のチカラ
【赤】
アドレナリンの分泌を促し、体力、気力、持久力を回復させて元気にする。
【ピンク】
興奮を抑え、落ち着かせる。快活さ、若々しさを保つ。ストレス緩和。
【オレンジ】
血糖値を正常に保ち健康増進に。チャレンジや自己実現力を高める。
【黄】
好奇心を高める。コミュニケーションを増やし、人や場を明るくする。
【緑】
ストレスの解消。心を穏やかにし、身体を癒やす。健康意識が高まる。
【ゴールド】
豪華さを演出する助けに。経済力を高め、高い理想へ導く。
【シルバー】
落ち着き、沈着などの生理的効果。自分の価値を高める。
【青】
人を安心させ、集中させてくれる。神経の安定、判断力、創造力を高める。
【紫】
覚醒・集中心・積極性・記憶の活性化、痛みの緩和、安眠などの効果がある。
【ブラウン】
健康的で落ち着きのある雰囲気をつくる。安堵感を与える。
松永修岳著『幸せを呼ぶ!奇跡の玄関』より
色づかいの工夫で、暮らしを豊かに
どんな色彩を見ているのか、どんな色彩に囲まれているのか。
これが心に影響を与え、感じたことが神経とホルモン分泌を通し、我々の行動思考が決定され、それが人生となります。
色彩は無意識に心に入力され、人生に影響を与えているのです。
我々がどのように思い、どのように感じるかで、ドーパミンやセロトニンの量が変わります。
黄色い色彩で神経を刺激すれば、神経は突起を伸ばし、枝分かれして脳は刺激され、ちょっとしたことでも楽しいと感じるようになります。
まとめ
色づかいの工夫で、心地良く、健康で、幸せがつづく家にすることもできます。
環境脳科学の観点からも色が心や神経系に与える影響を十分に考慮しながら、リビング、キッチン、寝室、廊下、トイレなど、様々な役割に従った色づかいをするとよいでしょう。
色が人の心理に与える効果を考慮して、ご家族の幸せな暮らしにつながる色づかいを取り入れていきましょう。
さあ、あなたはどのような色彩を選びますか。
それが家族を守る家。家族の円満と健康と幸せに豊かに暮らせる大きな決め手となります。
仁・幸夢店は、家族が円満に健康で幸せに安心・安全に暮らせる、しあわせになれる家を創り続けています。
施工エリアは千葉県、東京都、神奈川県、埼玉県、茨城県他です。
これから土地探し、住宅、マンションの新築、リフォーム、リノベーションをご計画の方に、仁・幸夢店ではより詳しくお伝えするために対面、オンラインどちらでもご相談承ります。お気軽にお問い合わせください。
<筆者プロフィール>
長谷川 聡龍
仁・幸夢店株式会社 取締役
一級建築士・二級施工管理技士・気密測定士・電磁波測定士・風水カウンセラー・四柱推命士・ビジネス姓名判断士・ハウスインスペクター
多くの方は一生の三分の二は自宅で過ごします。その家が心地よく快適で、家族を育み円満に健康に暮らせたらどんなに幸せでしょうか。家は家族の命を安心・安全に守る究極の器です。住まう方のお役に立つように高性能・風水・建築医学を取り入れた「いい家」を設計・施工しております。